権利関係 民法 頻出

債権・売買・賃貸借・相続

契約まわりと借地借家法・相続。権利関係の総仕上げです。

🎯 このレッスンのゴール

  1. 債務不履行・解除・危険負担・同時履行の抗弁権を整理できる
  2. 売買の手付(解約手付)と契約不適合責任のルールを説明できる
  3. 賃貸借と借地借家法(借地権・借家権)を表で使い分けられる
  4. 相続の順位・相続分・遺留分・承認放棄を計算・判断できる

先生役の「いえまる」です。ここは権利関係の総仕上げ。契約がうまくいかなかったときどうなるか(債権)、不動産を売り買い・貸し借りするときのルール(売買・賃貸借)、そして人が亡くなったあとの財産(相続)を一気に学びます。とくに借地借家法は宅建で毎年必ず出る最頻出。表でスッキリ整理していきましょう。

A. 債権の基本(契約がうまくいかないとき)

債権(さいけん)とは「相手に何かをしてもらう権利」、債務(さいむ)とは「相手のために何かをする義務」です。代金を払う、建物を引き渡す――これらが約束どおりに行われないと、いろいろな問題が起きます。その対処ルールを見ていきます。

1. 債務不履行(さいむふりこう)

約束した債務をきちんと果たさないことを債務不履行といいます。大きく2つのタイプがあります。

種類意味
履行遅滞(りこうちたい)できるのに、期限までに行わない(遅れ)引渡日を過ぎても建物を渡さない
履行不能(りこうふのう)もう行うことができなくなった引渡し前に建物が焼失した
たとえ話

友だちに「来週ケーキを焼いて渡すね」と約束したとします。来週になっても焼かないのが履行遅滞。約束のケーキ型が壊れて二度と同じものが作れない、というのが履行不能。同じ「約束やぶり」でも、遅れているだけか、もう無理かで対応が変わるのです。

2. 損害賠償

債務不履行で損害が出たら、債権者は損害賠償(お金での埋め合わせ)を請求できます。原則として、債務者に帰責事由(責められる事情)があることが必要です。あらかじめ賠償額を決めておく損害賠償の予定もできます。

ひっかけ注意:金銭債務の特則

お金を払う債務(金銭債務)が遅れた場合は、債務者に帰責事由がなくても遅延損害金を払う必要があります。「不可抗力だったから払わなくてよい」は×。お金は「ない」では済まされない、と覚えましょう。

3. 契約の解除

相手が約束を守らないとき、契約を解除してなかったことにできます。タイプで催告が要るかどうかが変わります。

種類内容
催告解除(さいこくかいじょ)「○日以内に履行して」と催告し、それでも履行されないときに解除できる(履行遅滞の場合など)。
無催告解除催告せずただちに解除できる。履行不能のときや、契約の目的が達成できないことが明らかなときなど。
ひっかけ注意:解除に帰責事由は不要/軽微なら解除不可

債務不履行による解除は、債務者の帰責事由がなくてもできます(解除は「契約を終わらせて自分を解放する」制度なので)。一方、不履行が軽微なときは催告しても解除できません。また解除すると当事者は原状回復義務を負い、受け取ったものを返し合います。

4. 危険負担(きけんふたん)

売買契約のあと、どちらの責任でもなく目的物が滅失(例:地震で建物が倒壊)したら、買主は代金を払わないといけないのか――これが危険負担の問題です。

ポイント:買主は代金支払を拒める

当事者双方に帰責事由なく履行不能になったとき、買主は代金の支払を拒むことができます(履行拒絶)。「物はもらえないのに代金だけ払う」という不公平を避けるしくみです。なお、買主の責任で滅失した場合は、買主は支払を拒めません。

5. 同時履行の抗弁権(どうじりこうのこうべんけん)

売買のようにお互いに義務を負う契約では、「相手が渡すまで、こちらも渡さない」と主張できます。これが同時履行の抗弁権です。

具体例

建物の売買で、売主は「代金をくれるまで引き渡さない」、買主は「引き渡してくれるまで代金を払わない」と言えます。どちらも相手が先に動くまで自分の履行を拒めるので、結果として引換えで同時に行うことになります。

6. 連帯債務・保証・連帯保証(さわり)

債権を確実に回収するための「人的担保」です。3級レベルでは違いの整理が問われます。

種類特徴
連帯債務複数人が、それぞれ全額の支払義務を負う。債権者は誰にでも全額請求できる。
保証主たる債務者が払えないとき、保証人が代わりに払う。保証契約は書面(電磁的記録を含む)でしないと無効
連帯保証保証の一種だが、催告の抗弁権・検索の抗弁権(補充性)がなく、分別の利益もない。債権者にとって最強の人的担保。
ひっかけ注意:連帯保証には「補充性」「分別の利益」がない

ふつうの保証人は「まず主債務者に請求して」(催告の抗弁)「先に主債務者の財産を差し押さえて」(検索の抗弁)と言えます。これが補充性。また保証人が複数なら頭数で分けて負担すれば足ります(分別の利益)。ところが連帯保証人にはこのどちらもありません。いきなり全額請求されても拒めません。

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B. 売買(手付・契約不適合責任)

1. 手付(てつけ)

契約のときに買主が売主に渡すお金を手付といいます。とくに断りがなければ解約手付(かいやくてつけ)と推定され、相手が契約の履行に着手するまでは、手付を使って契約を解除できます。

ポイント:解約手付の解除ルール

買主から解除:交付した手付を放棄する(手付流し)。
売主から解除:受け取った手付の倍額を現実に提供する(手付倍返し)。
・どちらも、相手方が履行に着手した後は手付解除できなくなる。

ひっかけ注意:「自分が着手」ではなく「相手が着手」

手付解除ができなくなるのは「相手方が履行に着手したとき」です。自分が着手していても、相手がまだなら解除できます。「自分が着手したらもうできない」は×。また手付倍返しは「口で言う」だけでなく現実の提供が必要です。

2. 契約不適合責任(けいやくふてきごうせきにん)

引き渡された目的物が、種類・品質・数量について契約の内容に適合しないとき(例:雨漏りする中古住宅)、買主は売主に責任を追及できます。請求できる手段は次の4つです。

手段内容
① 追完請求修補・代替物の引渡し・不足分の引渡しを求める(直してもらう)。
② 代金減額請求原則として催告して直されないとき、不適合の程度に応じて代金を減らす。
③ 損害賠償請求売主に帰責事由があるとき、損害の埋め合わせを求める。
④ 解除催告解除・無催告解除のルールに従い契約を解除する。
ひっかけ注意:種類・品質は「知った時から1年以内に通知」

種類・品質の不適合は、買主が不適合を知った時から1年以内にその旨を売主へ通知しないと、責任追及できなくなります(売主が不適合を知っていた等の場合を除く)。数量の不適合や権利の不適合には、この1年通知の制限はありません。「引渡しから1年」ではなく「知った時から1年」である点に注意。

C. 賃貸借と借地借家法(宅建 最頻出)

物を貸し借りする契約が賃貸借です。土地・建物の賃貸借には、借主を強く保護する特別法借地借家法(しゃくちしゃっかほう)が上乗せされます。まず民法のベースを押さえ、次に借地・借家を見ます。

1. 民法の賃貸借

具体例

アパートを借りているAが、勝手に友人Bへ又貸し(転貸)したとします。これは無断転貸。大家さんは原則として契約を解除できます。ただし「背信的行為と認めるに足りない特段の事情」があるときは解除できない、という例外もあります。

2. 借地権(建物所有目的で土地を借りる権利)

項目内容
存続期間当初は30年以上(30年より短い定めや定めなしは30年になる)。更新後は1回目20年以上、2回目以降10年以上。
更新建物がある場合、借地人の請求や使用継続で更新される(地主が更新を拒むには正当事由が必要)。
建物買取請求権更新されず借地が終了したとき、借地人は地主に建物を時価で買い取れと請求できる。
対抗要件借地上に建てた建物の登記(借地人名義)があれば、土地が第三者に売られても借地権を対抗できる。土地の賃借権登記がなくてもよい。

3. 借家権(建物を借りる権利)

項目内容
存続期間1年以上で自由(1年未満の定めは「期間の定めのない契約」とみなされる)。上限なし。
更新・正当事由賃貸人が更新拒絶・解約するには正当事由が必要。期間満了の1年前~6か月前に更新拒絶の通知をしないと、同条件で更新(法定更新)。
造作買取請求権賃貸人の同意を得て付けた畳・建具などの造作を、契約終了時に時価で買い取れと請求できる(特約で排除可能)。
対抗要件建物の引渡し(実際に住むこと)があれば、建物が第三者に売られても借家権を対抗できる。登記は不要。
ひっかけ注意:借地と借家で対抗要件がちがう

借地の対抗要件 = 借地上の建物の登記
借家の対抗要件 = 建物の引渡し(住むこと)。
「借家も登記が必要」は×。借家は引渡しだけでOKです。ここは入れ替え問題が頻出なので確実に。

4. 定期借地権・定期借家

更新されず、期間が来たら必ず終わるタイプです。貸主が「いつか必ず返ってくる」安心を得られます。

種類ポイント
定期借地権(一般)存続期間50年以上、更新なし。書面(公正証書等)で契約。終了時は更地で返すのが原則。
定期借家更新がない建物賃貸借。書面で契約し、事前に「更新がない旨」を記載した書面を交付して説明する必要がある。期間1年未満も有効。
ひっかけ注意:定期借家は「書面で説明」が必須

定期借家では、契約書とは別に、更新がない旨を記載した書面を交付して説明しなければ、その「更新なし」の定めは無効となり、ふつうの(更新できる)借家になってしまいます。口頭説明だけは×

5. 敷金(しききん)

ポイント:敷金の返還は「明渡し後」

敷金は、賃料の不払いなど借主の債務を担保するために預けるお金。賃貸借が終わり、借主が建物を明け渡した後に、未払賃料や原状回復費などを控除した残額が返還されます。「明渡しと敷金返還は同時履行」ではなく、明渡しが先です。

ひっかけ注意:明渡しが先、控除あり

「借主は敷金を返してもらうまで明渡しを拒める(同時履行)」は×。先に明け渡し、そのうえで未払分などを差し引いた残りが戻ります。通常損耗・経年変化の分は原則として借主負担になりません。

D. 相続

人が亡くなると、その財産(プラスもマイナスも)が相続人に引き継がれます。誰がどれだけ受け取るかがルール化されています。

1. 法定相続人と順位

配偶者は常に相続人になります。それに加えて、次の順位の高い人が相続人になります(先順位がいれば後順位は相続しない)。

順位相続人
第1順位子(亡くなっていれば孫が代襲相続)
第2順位直系尊属(父母など。子がいないとき)
第3順位兄弟姉妹(子も直系尊属もいないとき。甥姪まで代襲あり)

2. 法定相続分

相続人の組合せ配偶者もう一方
配偶者 + 子1/2子全体で 1/2
配偶者 + 直系尊属2/3直系尊属全体で 1/3
配偶者 + 兄弟姉妹3/4兄弟姉妹全体で 1/4
具体例

夫が亡くなり、妻と子2人が相続するとします。妻が1/2。残り1/2を子2人で等しく分けるので、子はそれぞれ1/4ずつです(1/2 ÷ 2 = 1/4)。同じ順位の人が複数いれば、その取り分を頭数で等分すると覚えましょう。

3. 遺言(いごん/ゆいごん)

種類特徴
自筆証書遺言本人が全文・日付・氏名を自書し押印(財産目録はパソコン等も可)。手軽だが要件不備で無効になりやすい。
公正証書遺言公証人が作成。証人2人が必要。確実で紛失・偽造の心配が少ない。

4. 遺留分(いりゅうぶん)

ポイント:最低限もらえる取り分

遺言で「全財産を他人へ」と書かれても、一定の相続人には最低限の取り分(遺留分)が保障され、侵害された分はお金で取り戻せます(遺留分侵害額請求)。総体的遺留分は原則2分の1(直系尊属のみが相続人のときは3分の1)。

ひっかけ注意:兄弟姉妹に遺留分はない

遺留分が認められるのは配偶者・子(その代襲者)・直系尊属だけ。兄弟姉妹には遺留分がありません。「兄弟姉妹も遺留分を請求できる」は×。頻出の定番ひっかけです。

5. 相続の承認・放棄

ひっかけ注意:承認・放棄は「知った時から3か月以内」

限定承認・相続放棄は、自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述します。期間内に何もしなければ単純承認したものとみなされます。「相続放棄は他の相続人の同意が必要」は×(単独でできる)。一方限定承認は相続人全員で行う必要があります。

これで権利関係の総仕上げは完了です。とくに借地(建物登記)と借家(引渡し)の対抗要件手付は相手の着手まで兄弟姉妹に遺留分なし――この3つは毎年のように狙われます。確認テストで定着させましょう!
演習確認テスト(全7問)

〇か×で答えてみましょう。ボタンを押すと答えと解説が出ます。

Q1. 金銭債務の履行が遅れた場合、債務者に帰責事由がなくても遅延損害金を支払わなければならない。

正解は 。金銭債務には特則があり、不可抗力でも免れません。「お金がない」は言い訳になりません。

Q2. 解約手付による解除は、自分が履行に着手した時点でできなくなる。

正解は ×。できなくなるのは相手方が履行に着手した時点です。自分が着手していても、相手が未着手なら解除できます。

Q3. 種類・品質の契約不適合は、目的物の引渡しから1年以内に通知しないと責任追及できない。

正解は ×。「引渡しから」ではなく、不適合を知った時から1年以内に通知が必要です。

Q4. 建物賃貸借(借家)の対抗要件は、建物の賃借権の登記である。

正解は ×。借家の対抗要件は建物の引渡し(実際に住むこと)です。登記は不要。建物登記が対抗要件なのは借地のほうです。

Q5. 敷金は、賃借人が建物を明け渡した後に、未払賃料等を控除した残額が返還される。

正解は 明渡しが先で、敷金返還は後。明渡しと敷金返還は同時履行の関係には立ちません。

Q6. 被相続人の兄弟姉妹にも、遺留分が認められる。

正解は ×。遺留分があるのは配偶者・子・直系尊属のみ。兄弟姉妹には遺留分はありません

Q7. 連帯保証人には、催告の抗弁権・検索の抗弁権がなく、分別の利益もない。

正解は 。連帯保証には補充性(催告・検索の抗弁)も分別の利益もありません。いきなり全額請求されても拒めません。

暗記一問一答(全8問)
Q1. 引渡日を過ぎても建物を渡さない――この債務不履行を何という?
A. 履行遅滞です。できるのに期限までに行わない状態をいいます。
Q2. 当事者双方に帰責事由なく目的物が滅失したとき、買主は代金についてどうできる?
A. 代金の支払を拒むことができます(危険負担・履行拒絶)。
Q3. 売主が解約手付で契約解除するには、何をする?
A. 受け取った手付の倍額を現実に提供します(手付倍返し)。
Q4. 借地権の最低存続期間は?
A. 30年以上です(30年未満や定めなしは30年になります)。
Q5. 借地権の対抗要件は?
A. 借地上の建物の登記(借地人名義)です。土地賃借権の登記がなくても対抗できます。
Q6. 定期借家契約を有効にするための形式は?
A. 書面で契約し、かつ更新がない旨を記載した書面を交付して説明することが必要です。
Q7. 配偶者と兄弟姉妹が相続人のとき、配偶者の法定相続分は?
A. 4分の3です(兄弟姉妹全体で4分の1)。
Q8. 相続放棄や限定承認は、いつまでに家庭裁判所へ申述する?
A. 自己のために相続開始を知った時から3か月以内です。何もしないと単純承認とみなされます。

📌 このページのまとめ

  • 債務不履行は履行遅滞・履行不能。金銭債務の遅延は帰責事由不要で責任を負う。
  • 解除は催告解除・無催告解除。解除に帰責事由は不要、軽微な不履行では解除不可。
  • 双方無責の滅失で買主は代金支払を拒める(危険負担)。双務契約では同時履行の抗弁権
  • 保証は書面で。連帯保証は補充性・分別の利益なし
  • 解約手付:買主は放棄・売主は倍返し。相手の履行着手まで解除できる。
  • 契約不適合責任は追完・代金減額・損害賠償・解除。種類品質は知った時から1年通知
  • 借地=30年以上・建物登記が対抗要件・建物買取請求。借家=引渡しが対抗要件・正当事由・造作買取請求
  • 定期借地・定期借家は更新なし・書面(定期借家は書面交付説明が必須)。敷金は明渡し後に控除して返還
  • 相続:配偶者は常に相続人。配偶者と子=1/2ずつ。兄弟姉妹に遺留分なし。承認放棄は3か月以内